これも陳 舜臣著「曼荼羅の人」と同様に空海の渡唐だけの内容で
あるが「曼荼羅の人」と違って史実というのでなく夢枕氏得意の幻
術のことを中心に空海の渡唐と絡ませて書いており、おもしろ
いと言えばおもしろい。
4冊もあるので読むのが大変かなと思ったが活字も大きく読む
だけならあまり疲れない。。特に空海と橘逸勢との会話は映画で
見た「空海」や司馬遼太郎著「空海の風景」にでてくる内容を参
考にしている。
興味を引かれたのは空海と橘逸勢の会話の中で般若心経の解釈
がわかりやすい。・・・・・物質の色は人の心が認識することに
よってある。しかしそれも未来永劫とどめおけるものではない。
宇宙のすべてを肯定する。物欲も色欲もすべて菩薩の位とする。
形ある物すべて滅するけれども質量そのものが変化せず不滅で
ある。
心経の最後の「羯帝羯帝波羅羯帝波羅僧羯帝菩提僧莎訶」
はサンスクリットの音写だけで漢字の意味が通じていないが玄奘
もあえてこれを訳していない。著者はこれを現世の大和讃だと言
っている。すなわち山水草木、生きとし生けるものの大合唱だと
説明している。また般若心経そのものが「呪」であるとしている。
私もそう思う。
あと楊貴妃や阿倍仲麻呂の話が出て来て、後半その話で殆どが
占められてしまう。この中で最初からも出てくるのであるが道教
の徒の黄鶴やその弟子の丹竜や白龍が出てくるのであるが、おも
しろいのは恵果が空海に密教のすべてを譲ったとき、恵果の兄弟
弟子の珍賀が恵果に文句をいいその晩、珍賀が夢で四天王に踏ん
だり蹴られたりして翌日、空海の所に謝りに来る話が御遺告に出
てくるが、これを著者は道士の丹竜の仙術の仕業だと作っている
あたりよくできていると思った。
空海
沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ1
沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ2
沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻之三
沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻之四
夢枕 獏著 「沙門空海唐で鬼と宴す」 全4巻
夢枕 獏 「沙門空海唐で鬼と宴す」

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